お知らせ
快挙 2年生の大和田麻佳さんが平成19年度第27回全国高校生読書体験記コンクールで優良賞を受賞しました
本校では夏休みに読書感想文が課題として出されます。各クラスから優秀作品を選び、校内読書感想文コンクールを毎年実施しています(「城北だより」第5号で既報)。大和田(山形五中出身)さんの「老人と少年のひと夏」と題した感想文は、校内コンクールでも優秀な作品の一つとして、(財)一ツ橋文芸教育振興会主催の「第27回全国高校生読書体験記コンクール」に出品されました。
全国47都道府県の441校の参加、応募作品が132,509編もあった中から、優良賞37編の中に選ばれたのです。全校集会の壇上で、清水校長から賞状と副賞を頂きました。この賞には個人賞ばかりではなく学校賞として集英社文庫50冊も贈られ、清水校長から「過去にない快挙です」とお褒めの言葉がありました。
今回のコンクールを通して「夏の庭」と出合うことが出来ました。これからも数多くの本と関わりをもち、人生を豊かにしていきたいと思います。
大和田麻佳さん(山形五中出身)
老人と少年のひと夏
幼稚園の頃、私の祖父は突然いなくなった。祖父の死を幼い私はそう感じた。その時の事はうっすらと記憶に残っている。夕方母が病院から帰って来て「おじいちゃんに会いに行こう。」と兄と私を迎えに来た。死というものを理解していない私は「急にどうしたのだろう。」と思っただけだった。行ってみると、顔が真っ白で、目を閉じた祖父がいた。いつもとは違った様子でベットの上に寝ている。誰の話し声も聞こえず、祖父を見て皆泣いていた。死とはどういう事なのか、祖父が私の目の前から消えてしまったような漠然とした形でしか死をとらえることができなかった。しかし、この時初めて死というものを意識した様な気がする。
「夏の庭」は3人の少年の「死の瞬間を見たい」という好奇心から始まる。小学校最後の夏、それぞれの家庭の問題を抱えながらも、子供ゆえに解決する事もできないそんな生活の中で、いつもとは違った夏休みを送る事になる。一人の老人を見張り、尾行することによってその目的を果たそうとしていた。
老人は孤独で、家の周りはゴミだらけ。夏なのにコタツに入り、毎日テレビを見ている。見ているというより向き合っていると言った方が良いかもしれない。そんな生活だった。
私は人間の「死の瞬間」を見たいと思ったことはない。なぜなら、私は死の恐怖を認識しているし、人間の生死を左右する瞬間を見る事は不遜な態度であると思っているからだ。私がこの様な考え方を持っているのは私が小学生よりは少々大人であるからと思う。
「死を見てみたい。」この行動は小学生だからこそ許される考えなのではないか。
3人の少年達は、老人に見張りも尾行もばれてしまう。しかしこの事によって彼らと老人の関係も変化してくる。老人はコタツを片付け、ゴミ捨て洗濯をし、コンビニ弁当ではなく買い物をし、料理を作る。最初は嫌々手伝っていた3人も最後には自分達から手伝うようになる。このころには老人と少年達の関係は他人ではなく知人になり年齢を越えた親友になっていたのではないか。老人から洗濯ロープの張り方、包丁の使い方などを教わりながらも老人の人生に関わったことによって少年達も変化していく。
合宿から帰った少年達は死んでいる老人を見つける。テーブルの上に4つの葡萄があった。布団の上に横たわり、お腹の上で両手をゆったりと結んでいる。これが老人の最期だった。
少年達は老人と関わっていくなかで、もう「死の瞬間を見たい」とは思っていない。それどころか、老人の死を信じたくない気持ちが強い。死とは以前思っていた幽霊、お化け、妖怪のような恐ろしいものではなかった。人間の死を素直に受け入、直摯に受けとめなくてはならないと感じたのではないか。私も人間の死は尊厳をもって受け入れなければならないと思う。
彼らは老人の死後、自分達で決めた将来に向かってそれぞれに進路を進めていく。孤独だった老人は彼らと触れ合っていく事によって生きる力をもらい生きがいを得ていった。
4人で植えた庭いっぱいのコスモス。読み進めていくうちにこの小説に引き込まれて、夏の庭に咲いたコスモスを私も自分が植えたような爽快感を感じながら想像することができた。
庭を見て4人の満足した様子。老人は出逢ったことへの感謝、嬉しさを感じていた。彼らは死の瞬間を見ることはなかったが、4人の関係と変化を考える時、人間は一人で生きているのではないと言われるが、私なりにその意味が理解できたような気がする。
人間は自分の最後をどんな形で迎えるのか、自分の意思で決めることは難しい。いつ自分の命が消えてしまうのか、自分自身にも誰にも明日の事は分からない。だからこそ、今日というこの日を一生懸命に生きていこうと私は思っている。この本を読んだ後に、祖父の畑や広い田んぼが思い出された。3人の少年達が一生忘れない庭のコスモスのように私にも脳裏に浮かぶ風景があると気づかせてくれた。そして亡くなった祖母の写真につい、 「お祖父ちゃん、元気?」 と言って笑ってしまう。天国の祖父は何と言っているのだろうか。
書 名 『 夏 の 庭 』
著 者 湯 本 香樹実
出版社 新 潮 社





