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学校長Essay ~多様性と調和~

(以下は10月5日の後期始業式に話した内容の一部です)

4月、始業式と入学式の式辞は、霞城公園の桜が満開というタイミングに合わせ「ソメイヨシノと多様性」の話をしました。ソメイヨシノはクローンで増えたもので、同じ遺伝子であるために、一斉に花が咲き、一斉に花が散る。しかし、クローンは自分と自分以外との区別がつかないため、枝が重なり合い、枝枯れを起こし、やがて衰え始める。一方、私たちはクローンではなく、一人一人が多様性に溢れる存在なのだ・・・そういった話でした。

この半年間で、このことを実感した場面を振り返ってみます。
まずは東京オリンピック・パラリンピックです。東京2020大会では、目指すヴィジョンとして「多様性と調和」を掲げ、このように宣言しています。
○人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うことで社会は進歩する。
○東京2020大会を、世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会をはぐくむ契機となるような大会とする。

私がテレビを通して見たオリンピック競技の中で、多様性を感じた場面が3つありました。
一つは、スケートボード女子パーク競技の決勝戦です。15歳の岡本碧優(みすぐ)選手が、メダルを狙って難しい技に挑んだものの転倒します。そして、壁を上がってきた岡本選手に他の選手が近寄ってきて抱擁し、岡本選手を担ぎ、演技を称賛したシーンです。勝ち負けだけにとらわれないスポーツの新しい形、多様性を感じた瞬間です。
二つ目は、男子の柔道競技、決勝戦という極めて重要な試合で、女性が審判を務めていた場面。女子の試合を女性の審判員で、というのは今となっては見慣れた光景ですが、男子の試合を女性の審判員が、というのを見て驚きました。逆はよくあることですので、こういった先入観を持つこと自体が良くないわけです。日本発祥の柔道が世界的な競技に広がったわけが、こういった性別にとらわれない考え方からも理解できました。
三つ目ですが、自身の性自認や性的指向を公表したLGBTQアスリートの数が、オリンピック史上最多で、五年前のリオオ五輪の2倍以上になりました。そして、ウエイトリフティング競技のローレル・ハバード選手はトランスジェンダーを公表しての出場で、オリンピック史上初めてのことでした。ハバード選手は「これほど多くのニュージーランドの人たちが、私を温かくサポートしてくださったことに心から感謝します。」という言葉を述べていました。

日本では、超党派の国会議員によるLGBT議員連盟が作られ、オリパラ開催に合わせた法の整備が進められていましたが、残念ながら法制化されることはありませんでした。この間、先ほど紹介したトランスジェンダー選手の五輪出場について「ばかげている」と言った政治家や、「LGBTは種の保存に背く」などといった政治家の発言が批判を集めました。とても悲しいことです。

8月、夏休みの終わりでしたが、希望する生徒を対象に、日本の大学院で学んでいる留学生を招き、英語による少人数でのグループワークやプレゼンテーションなどのプログラムを行いました。生徒の参加は51名で、留学生は8名。その出身地はボツワナ、ケニヤ、メキシコ、ウガンダ、パキスタン、ベネズエラ、エジプト、インドネシアと多岐にわたるものでした。それぞれの国の教育事情は決して恵まれているとは言えないわけですが、学問に対する熱意は大きく、参加した生徒は、多様性に触れる絶好の機会と大きな刺激をもらったようです。次回は3月の開催を予定しています。

そして、城北祭。車いすのユーチューバー、渋谷真子さんを招いての講演会。脊髄損傷で車いす生活となりながらも、果敢に、前向きに生きる渋谷さんの話に圧倒されました。「過去は変えられないけど、未来は考え方次第でいくらでも変えることができる。」というメッセージに勇気をもらいました。ちなみに、彼女の当日のツイートは、「1か月半ぶりにメイクをして今日は高校の学園祭に呼ばれ、やまぎん県民ホールにて講演会。1000人規模でのお話は初めてでドキドキ。そして女子高生のキャピキャピにドキドキ。」と綴られています。

そしてここからは、これからの話になります。現在、これまで使用できなかった体育館1階のトイレを改修中です。10月中に完成する予定ですが、それにあわせ自動販売機を2台設置します。飲料水の他、カロリーメイトやパンなどの食品も置く予定で、その品目については、新しい生徒会を中心に、生徒の皆さんに決めてもらいたいと考えています。交渉しましたところ、今回特別に、売り上げの1%を、生徒会を経由して外国の恵まれない子供たちの教育支援に使わせていただけることになりました。SDGsで言えば、目標4の「質の高い教育をみんなに」への支援となります。100円の飲み物を買えばそのうち1円が寄付になりますので、ぜひ利用してください。

中学3年生向けに作成したオープンスクールのポスターには、「好きなものはみんな違う」と書かれています。お互い好きなものを認め合えたら、みんなの個性はいっそう輝きます。ぜひそんな多様性にあふれる学校を作っていきましょう。