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学校長Essay ~令和2年度の折り返しにあたって~

本校は2学期制をとっており、マラソンに例えれば昨日と今日がその「折り返し点」ということになります。
時間の感覚とは不思議なもので、最初の半分は、時間の経過が長く感じられ、折り返してからの半分は短く感じます。初めて通る道であれば、行きは遠く、帰り道は近く感じたことがあるでしょう。サッカーであれば、前半よりも後半は短く感じるものですが、やっている選手たちはそんなに単純ではなく、試合に勝っている時は、最後の5分がとても長く感じたりもします。皆さんはまだ高校生なので、人生の折り返し点まではまだまだ先ですが、それでも小学校の時を振り返ると、1学期ってずいぶん長かったなぁと思うはずです。

あるときアインシュタインは、相対性理論の意味を聞かれて、こう答えたそうです。
「熱いストーブの上に手を置くと、1分が1時間に感じられる。でも、好きな女の子と話をしていると、1時間が1分に感じられる。それが、相対性です。」と。
勿論、これは独特のユーモアですが、実際に時間の感じ方というのは主観的に変化するわけです。楽しくない時間は長く感じる一方、何かに熱中していると短く感じられ、あっという間に時間が経過しているということもあります。

しかし不思議なことに、退屈で長く感じた時間は、記憶の中ではほとんど消えてしまい、逆にあっという間に過ぎた楽しい思い出は記憶の中では膨らみます。私自身、これまでの人生で一番楽しかったのはイタリアを旅行したときのことで、あっという間の1週間でしたが、今でも食べたパスタの種類まで思い出すことができ、記憶の中では膨らんでいます。先月の文化祭では、四千頭身や丸山玲さんらをお呼びしてお笑いのライヴショーをしましたが、高校時代の楽しかった思い出として、皆さんの記憶の中に長く残るといいなと思います。

さて、話は変わりますが、今日からインフルエンザの予防接種が始まります。皆さんは「集団免疫」という言葉を知っているでしょうか。これは、誰もワクチンを打っていない集団では、感染症はあっという間に広がる。ワクチンを打って免疫がついた人たちが多少いれば、その広がりは鈍るが効果は一部にとどまる。そして、ほとんどの人がワクチンを打って免疫を付けている集団なら、その間で感染する人はぐっと低くなる、というものです。集団の8割が予防接種をすれば、流行は起こりにくくなることもわかっています。これが「集団免疫」といわれるものです。

そして、自分のためではなく、社会のために予防接種するというこの考え方は「公衆衛生」と呼ばれています。今年はインフルエンザと新型コロナウイルス感染症が同時に流行するのではないかと危惧されていますが、もし熱を出して病院に行くとなると、医療機関はその対応に相当な労力を使うことになります。予防接種は自分のためだけではなく、社会のためにもするものです。幼子や高齢者、様々な病気を抱えている方など感染症に対してハイリスクな人たちが多くいます。今日からそういった人たちへの予防接種が始まり、高校生は11月に入ってからとなりますが、アレルギー症状を持つ人などは医師に相談した上で、公衆衛生という視点で、是非みなさん、インフルエンザの予防接種を受けてください。

最後になりますが、今日から10月、3年生にとっては様々な選択の時がやってきます。不安でいっぱいになることもあるでしょうが、あらゆる選択は君たちの人生を決定するなどということはなく、単なる通過点に過ぎません。良い準備し、ベストを尽くす、それだけでいいのです。
『選択は決定ではなく通過点』
この言葉を3年生の皆さんに贈り、後期始業式の式辞とします。
(令和2年10月1日)