2021年07月21日
(以下は、夏休みを前に放送による全校集会で話した内容です。)
まずは高校野球の話から始めます。初戦、春を制した第1シードの酒田南に勝利し、私自身、夢の舞台である「甲子園」が頭をよぎりましたが、そんなに甘いものではなく、準々決勝で敗退となりました。しかしながら、これは高校野球に限ったことではないのですが、最後まで勝ち続けるのは1チームだけです。だからこそ、負けても何かを得ることが大切で、勝利だけを目的とする勝利至上主義に陥ってはいけません。
関西学院大学アメリカンフットボール部は、2003年の夏合宿で当時の副キャプテンの大切な命が失われて以降、ゲーム前には静かな聖書朗読とクリーンな闘いを誓う祈りがロッカールームで続いているのだそうです。そして、大切な試合の前には、ドイツの哲学者カール・ダイムの【堂々と勝ち、堂々と負けよ】という詩が朗読されるそうです。
いかなる闘いにもたじろぐな。
偶然の利益は、潔く捨てよ。
威張らず、誇りを持って勝て。
言い訳をせず、品位を持って負けよ。
堂々と勝ち、堂々と負けよ。
スポーツは、ともすると勝ち負けばかりに関心が向いてしまいがちです。しかし、本当に大切なことはそれに向き合う「姿勢」であり「態度」なのだということです。今回の野球部は、残念な結果ではありますが、堂々と勝ち、堂々と負けた、私はそう考えています。
さて、いよいよ東京オリンピックが始まりますが、本校の卒業生である高梨健太選手が出場することになりました。バレーボールというメジャーなスポーツで、わずか12名の代表に選ばれる、本当に素晴らしいことです。後輩のみんなにとっても誇りだろうと思います。そして、生徒会で作成してくれた応援ビデオ、拝見しました。ありがとうございます。また、応援幕については現在2枚目となりましたが、未だの人は是非激励のメッセージを書いてください。
ところで、高梨選手が心の支えにしている言葉として挙げたのが『夢へ挑戦』でした。これは本校男子バレーボール部の横断幕に掲げられた言葉だそうで、高校を卒業して大学、そしてVリーグに進んでも、この言葉を大切にしているということに感激しました。よく、オリンピック選手がメダルを取ると、「努力すれば夢はかなう」といった言葉を耳にしますが、いくら努力しても夢がかなわない選手の方が圧倒的に多いわけです。一方、「夢へ挑戦」という言葉は、結果よりもプロセスを重視するという点で、「堂々と勝ち、堂々と負けよ。」という言葉と共通するところがあるよう思います。
最後に新型コロナウイルスについてです。変異種であるデルタ株の感染が、未接種の40代、50代を中心に増えています。首都圏はこれからオリンピックの影響も出ると思われ、予断の許さない状況がしばらく続きそうです。感染拡大防止のために私からは2つについてお願いします。
一つは、咳やのどの痛み、発熱など、風邪症状が一つでもあったら、外出せず医療機関で診てもらってください。もし、家族に風邪症状があれば、検査の結果がでるまでは、皆さんの外出も控えてください。
二つ目はワクチン接種です。すでに打った生徒もいるようですが、ワクチンというのは予防の他に感染しても重症化しないという効果が期待できます。そして、もう一つ忘れていけないのが集団免疫への貢献という点です。ある病原体に対して、一定の割合以上の人が免疫を持つと、感染者が出ても流行しにくくなり、間接的に免疫を持たない人も感染から守ることができます。この状態を集団免疫と言います。コロナワクチンについては、子どもやアレルギー症状を持つ人は、打ちたくても打てないわけで、そういった人たちを守るという点でも、ぜひ接種をお願いします。以前、日本人は科学的リテラシーが低いという話をしましたが、世界中で日本だけがマスクを外せない国などという悲劇が起こらないためには、若い人たちのワクチン接種がカギとなります。今日の新聞によれば、山形市も12歳以上の人へ接種券の送付が始まるとのこと。できれば夏休み中に1回目の接種できればと思いますが、怪しげな情報を鵜呑みにせず、科学的に正しい情報をもとに接種について判断してください。
さて、いよいよ明日から夏休みに入ります。しばらくは、テレビもネットも、オリンピックとコロナの話ばかりが続くと思いますが、所詮オリンピックは自分事ではありません。自分事でないものは、その時は熱狂してもすぐに冷めます。瞬間的な感動はあっても、その後の人生に影響を与えるほどのものではありません。若い皆さんにとって何より大事なのは自分で体験することです。高校生という年代は、様々な経験をしながら成長していくものです。感染対策という制約はありますが、今を大切に生きてください。それでは、夏休みを事故なく過ごし、8月23日、元気に会いましょう。そして、その後に待っている城北祭を楽しみましょう。