2021年12月27日
(以下は12月24日に実施したリモートによる全校集会における校長講話の内容です)
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年の瀬を迎えましたが、今年一年の世相を漢字ひと文字で表す「今年の漢字」が発表され、「金」の文字が選ばれました。夏に東京オリンピック・パラリンピックが開催されたことや、大谷翔平選手が大リーグでMVPを獲得したり、将棋の藤井聡太さんが史上最年少で四冠を達成したりするなど、各界で金字塔が打ち立てられたこと。そして、新型コロナウイルス感染拡大に伴う給付金などお金にまつわる話題が多かったことが理由のようです。
給付金といえば、国は子育て世帯への臨時特別給付金として、
18歳以下に対し10万円を給付することを決めました。
先に現金5万円を支給した後、
追加でクーポンまたは現金により5万円分を支給するという制度設
計なのですが、
クーポンにすれば必ず使われるので経済効果は期待できるものの、
印刷費など莫大な費用がかさんでしまうということで、
残りも現金でと考えている自治体が多いようです。しかしながら、
現金で支給すると、将来に備えて貯蓄に回す家庭も多いため、
コロナによる経済対策としてはどうなのかという声もあります。
ということで、今日はお金にまつわる話をします。
本校は、今年の3年生もそうですが、卒業後に就職する割合が約2割、専門学校への進学が約3割、大学・短大への進学が約5割となっています。これは、全国平均にほぼ近い数字で、高校卒業後すぐに就職する人は5人に1人です。そして、たとえ進学という道を選んだとしても、いずれは就職するわけです。それでは、人はどうして働くのでしょうか?
1つ目は、生活するための収入を得るためです。ただし、これについては、人以外の動物や生物も、生きる為に働いており、人に限ったことではありません。2つ目は、社会貢献です。毎日利用している電車の運転手さんも、コンビニの店員さんも、お米や野菜、果物を作っている農家の人たちも、みんな生活をするための収入を得ながら、何らかの社会貢献をしています。ちなみに、うちで飼っている猫でさえ、冬になれば私の布団を暖めるという貢献をしてくれます。3つ目は、自己実現、いわゆる「生きがい」です。これが他の動物とは違う人間特有のものなのだろうと思います。人は人生の大部分を職業人として生きることになります。できれば、自分の好きなこと、得意なことと仕事が結びつけられれば、その仕事は「生きがい」になるでしょう。
ところで、2つ目に挙げた社会貢献についてもう少し掘り下げて考えたいと思うのですが、職業として社会貢献するという直接的な貢献以外に、忘れてならないのが、働くことによって税金を納め、社会に貢献するということです。皆さんは物を買うときに10%の消費税を払っていますが、働き始めると、所得税や住民税など、所得額や家族構成などに応じて税金を納めることになります。一方、高校生は税金を使わせてもらっている立場にあり、保育園や幼稚園、小学校、中学校、そして高校と、大雑把な概算で教育費として一人当たり1000万円もの税金を使うことになります。高校は義務教育ではないし、ましてやその先の上級学校については、希望する者だけが進むわけなので、本来自己負担とするべきという考え方もあるわけです。しかし、今は逆の流れにあって、高等教育についても無償化が模索されています。一つはOECD加盟国の中で日本は教育に充てる費用がまだまだ少ないこと、もう一つは教育によって高度な技術を身につけて、やがては社会に貢献してくれるという期待からです。いわば「先行投資」の考えです。先日、宇宙旅行をしたZOZOの創設者、前澤友作さんのようにお金持ちになり、高額納税者になってくれればありがたいわけです。ちなみに、前澤さんは宇宙からお金配りをしましたが、私も彼から500円いただきまして、保護された犬猫の支援団体に寄付をしました。
先ほど、仕事は生きがいになればいいと話しましたが、たとえそうでないとしても、働くことで税金を納めることは、それ自体が極めて尊いことなのです。自分自身が一生懸命に生きること、そして働くこと自体がボランティアということになるのです。その意味で、来年4月から働くことになる皆さんには心からエールを贈ります。そして、「Cool Heads, but Warm Hearts」という言葉を贈ります。イギリスの経済学者、アルフレッド・マーシャルの言葉で、社会で活躍するには、「冷静に考える頭脳と温かい心」の両方が必要だと言っています。ここで「but」は、逆説ではなく強調です。冷静に考える頭脳以上に、温かい心を持つことが大事で、それを忘れずに仕事に励めば幸せになれます。
さて、以前、全校集会でも取り上げましたが、来年4月1日に成年年齢が18歳に引き下げられます。このことについて、その意義や、引き下げに当たって注意すべきことなど、皆さんに十分理解をしてもらえるよう、学校としても取り組んでいく予定ですが、その第一弾として、山形県防災くらし安心部 消費生活・地域安全課の方から、「18歳成人と消費生活」と題して、大切なお話をしていただきます。なお、国では成年年齢引き下げ特設ウエブサイト「大人への道しるべ」を開設し、1分でわかる動画も準備していますので、時間のある時にぜひ視聴してください。それでは、良い年をお迎えください。